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2021.06.26

55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第7回 スウェーデン 55プラス世代の今

日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方のコロナ禍でのライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。

Written by ブルセリド山本 由香/Photo by Peter Bruselid

アンナカーリン・レンスボさん(60歳)

アンナカーリン・レンスボさん
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スウェーデンで評判な日本の生活雑貨

日本の生活雑貨を輸入販売しながら、Eコマースの講師としても活躍しているアンナカーリン・レンスボさんは、ストックホルム市内でパートナーと暮らしています。
日本文化との出会いは80年代。出張で初めて東京を訪ねた時、大都市なのに街中が整備されていてきちんと機能し、人々も親切で、とても感銘を受けたそうです。その後、旅行で訪ねてから日本の生活雑貨の品質の高さに魅了され、2015年から輸入販売のオンラインショップを始めました。

ストックホルム市内にあるアンナカーリンさんのお店「Najs of Sweden」
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今、おうち時間が増えたことで、スウェーデンでは日本の生活雑貨にも注目が集まっています。アンナカーリンさんのお店で最近よく売れるのは浴衣。日本人のように夏に着るのではなく、バスローブ代わりにしたり、家の中でのリラックスウェアにしたりして、日常的に羽織る人が多いといいます。

バスローブ代わりや家でのリラックスウェアにする人が多い浴衣
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スウェーデンでは珍しがられる夫婦茶碗
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和食器やテキスタイルなど、質のいい日本の生活雑貨が並ぶ
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ほかにも、お弁当箱や雪平鍋、しゃもじ、すり鉢、レンゲなど、スウェーデンにはないものがよく売れています。日本独特の風合いの生地や、今治タオルなども好評。アンナカーリンさんも一つひとつ品質にはこだわって仕入れているので、日本の生活雑貨に魅了されるお客さんがますます増えているようです。

コロナ禍も貫かれたライフスタイル

日本の今治タオルやブランケットの質の高さも好評
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最近仕入れた日本の生地
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アンナカーリンさん
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コロナ禍も貫かれたライフスタイル

昨年から続くコロナパンデミックで世界は一変しましたが、アンナカーリンさんは「家での過ごし方はあまり大きく変わっていない」といいます。
仕事では、授業がリモートになって対応が少し煩雑になったり、ステイホームで生活雑貨を求める人が増えてお店が忙しくなったりしているものの、プライベートと仕事は別。元々きっちりわけていたので、自宅での生活スタイルはコロナに関係なく貫かれています。「家はくつろぐ場所と決めていて、仕事はしない」というアンナカーリンさん。Eコマースのリモート授業も、お店の奥のパソコンでやっています。

実家には80代後半の両親がいますが、70歳以上の高齢者は自宅待機し、他人との接触を極力避けるようにと国から要請があったので、春の数ヶ月間は会うことができませんでした。
暖かくなってからは外で会うようになり、今も時々訪ねています。「両親にあまり寂しい思いはさせたくないので、感染対策を万全にして、なるべく会いにいきます」と語るアンナカーリンさん。友人に会う機会も減っていますが、5歳と7歳の孫には今まで通り週に1回は会う生活を続けているそうです。

和食器もいろいろなものがとりそろっている
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エリザベス・トルブルンさん(57歳)

エリザベス・トルブルンさん
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たくさんの人と会っていた日々が一変

ストックホルム郊外に住むエリザベス・トルブルンさんは、スウェーデン保育事情を海外に推進する仕事をしています。仕事柄、人に会うことが多く、日々さまざまな会議をこなしているため、コロナ禍で仕事のスタイルは大きく変わりました。

「人と会うことが仕事で、ランチなどでもほぼ毎日のように人と会っていましたが、コロナが蔓延した春からはほとんど誰にも会っていません。とても残念ですが、感染を防ぐためには仕方がありません」とエリザベスさん。リモート会議が増え、今までとは異なる形で人と関わるようになりました。

2014年に建てた注文住宅はグレイの外壁とオレンジのドアが特徴的
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入り口には「雪が好き!!」というデコレーションが
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娘さんは昨年8月に大学生になってひとり暮らしを始めたので、現在はご主人と高校生の息子さんとの3人暮らし。実は息子さんは新型コロナに感染してしまい、1週間ほど症状が出たそうです。不幸中の幸いで、息子さんの部屋はご夫婦の部屋と離れており、専用のバスルームもあったため、できるだけ接触を避け、家庭内感染は防ぐことができました。

毎年クリスマスシーズンは人に会う機会が多かったのですが、今年はそれも叶わず。代わりに家族写真入りのグリーティングカードを作って送ったところ、とても好評だったそうです。

室内のキッチンダイニングルームは、フロア全体が岩熱の床暖房
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雪の中で楽しむアウトドアフィーカ

ステイホーム中は、食事やリラックスする時間、散歩に出かける時間など、日常生活を今まで以上に規則正しくするよう努めたというエリザベスさん。家の片付けをしたり、自分でマスクを作ったりと、日々を充実させています。また、自宅の庭でアウトドアフィーカもよく楽しんでいるといいます。

テラスでのアウトドアフィーカの準備をするエリザベスさん
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温かいコーヒーと一緒にエリザベスさん手作りの焼き菓子を
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「フィーカ」はスウェーデン人にとって交流を意味する大切な言葉で、コーヒーと一緒にちょっとした甘いものを楽しむ時間のこと。職場では飲み会の代わりに仕事時間内の休憩タイムとして、普段顔を合わせない人たちとフィーカで交流します。会議もコーヒーとシナモンロールをいただきながら、フィーカのように進行したりすることが少なくありません。

コロナ禍でアウトドアフィーカがトレンド
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今、スウェーデンではアウトドアフィーカが人気です。マイナス7度でも、外でフィーカを楽しんでいる人たちをたくさん見かけるほど。防寒着に身を包んで、暖かい火に当たりながら外でいただくコーヒーとクッキーは格別です。

エリザベスさんは先週、テラスでバーベキューも楽しんだそうです。バーベキューといえば夏の定番ですが、スウェーデンではコロナ禍で冬でもアウトドアを楽しむ人が増えています。

暖を取りながらアウトドアフィーカを楽しむエリザベスさんとご主人のロバートさん
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コロナ禍のスウェーデンへ

国によってさまざまなコロナ対策は、ロックダウンをしない独自路線を貫いたスウェーデンも注目されました。民主主義を大切に考えるスウェーデンらしい対策だったように思います。私は今年の1月中旬に日本からストックホルムに戻りましたが、こちらでは何の入国チェックもなく、自宅待機の要請もなく、本人まかせというところに少し驚いています。

また、スウェーデンではマスクをしている人がほとんどいません。日本とは大きな違いです。最近は公共交通やスーパーなど室内で人が集まる場所ではマスクをするよう要請がありますが、あまり徹底されていません。ハイリスクの高齢者には制限がありますが、それ以外はほとんど自由に生活しているという印象です。コロナが長引くことを考えると、感染に気をつけながらも普段通りに生活できるのは有難いのかもしれません。

この週末はマイナス気温でしたが、太陽が照ったので、カフェに長い列ができていたり、寒い中でアウトドアカフェが盛況だったりと、これもスウェーデンならではでしょう。特にフィーカは、なくてはならない存在のようです。


Written By 山本 由香
ストックホルム在住のデザインコンサルタント。スウェーデンのデザインとライフスタイル情報を発信するサイト「スウェーデンスタイル」を主宰しながら、スウェーデンと日本をつなぐ活動を行っている。北欧のパターンデザインに特化した事業スカンジナビアンパターンコレクションも展開中。

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