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2020.11.16

55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第3回 ビルギッタ・フェムリングさん(78歳)「自分の意思で好きなように暮らすのがいつまでも元気でいられる秘訣」

日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方のライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。

Written by 山本 由香/Photo by Peter Bruselid

シニアアクティブ向けの住宅BoViva

年齢を重ねていくと、どのような暮らしをしていきたいかを考えることがあるのではないでしょうか。自立が前提であるスウェーデンでは、大家族で暮らす人は少なく、家族とは適度な距離を保ちながら、高齢になっても自分らしい暮らしを続けます。特に55+というシニアアクティブ世代にとっては、年齢も考えながら、元気に暮らしていきたいという思いがあります。そんな世代のための住宅が、10年前にスウェーデンの大手銀行によって企画されました。その後、各世代向けの賃貸住宅を供給している企業の運営となり、ストックホルムやイェテボリなどの都心に建っています。

「元気に暮らす」という意味が込められた「BoViva」という集合住宅は、ちょっと特別なサービスを求める55+世代向けの賃貸住宅で、活動的で健康にも配慮した暮らしを提供しています。この世代が求めるクオリティの高い住まいは、単身か夫婦に最適な1LDKまたは2LDKで、各部屋にはバルコニーまたはパティオがついています。都会的な暮らしをしながら、自然も身近にある環境に建てられ、住民同士のコミュニティも充実しています。

共有施設として、いつでも自由にくつろげるロビー、ヨガなどができる広いジム、コンピュータールーム、サウナ、集会所、大キッチン、粗大ゴミ置き場、家族や友人が泊まれるゲストルームなどがあります。毎週火曜日には看護師がやってきて、健康相談にも乗ってくれます。平日には受付にレセプショニストがいて、さまざまな対応をしてくれます。まるでホテルのような暮らしぶりで、年齢を重ねて住むには理想の場所であると感じました。

ユニバーサルデザインの建物

今回お話を伺ったビルギッタさんは、もともとは私たちと同じ集合住宅にひとりで暮らしていました。ビルギッタさんがBoVivaに引っ越したきっかけは、2012年に行われた、私たちが住んでいる集合住宅全体の改装工事でした。ミッドセンチュリーに建てられたこの住宅は築50年を超えて改装が必要となり、120世帯の全室を数ヶ月かけて改装することになりました。その間はここに暮らすことはできず、他の場所に移らなければなりません。ビルギッタさんはこの改装工事をきっかけに、ここを離れることを思い立ちました。ひとり暮らしに不安を感じていたこともあり、高齢者向けの住宅をいくつか見学したところ、BoVivaが気に入りました。しかし入居待ちの状態で、すぐに入ることはできないだろうと諦めかけていたところ、運のいいことにちょうど部屋に空きがあり、すぐに入居することができたそうです。

ビルギッタさんが暮らす部屋は54平米の1LDKで、入り口を入るとすぐにリビングルームが見渡せます。オープンキッチンの広々としたリビングで、窓際にはバルコニーがあり、明るい日差しが入ってきます。お気に入りの北欧家具を揃え、好きなものだけに囲まれて暮らしています。この建物はシニア世代向けに、すべてユニバーサルデザインになっています。つまり、フロアに段差がなく、ドアも広めに作られているため、車椅子での行き来も楽にできます。

玄関を出ると、壁にアートが飾られた心地のいい長い廊下につながり、そのままロビーや集会所までいくことができます。外出することなく、建物内でさまざまな活動ができる暮らしです。ビルギッタさんの家賃は諸経費を含めて月に16万円程度とのことで、年金生活者でも無理なく暮らすことができますが、入居までに長い待ち時間がかかるため、早めに申し込む必要があります。

さまざまなアクティビティを企画

スウェーデンの55+世代向け住宅は、夫婦のどちらかが55歳以上であれば入居資格が得られます。現在BoVivaストックホルムには、110世帯の152人ほどが暮らしています。55+世代とはいえ、ここの住民の平均年齢は74歳だそうです。ほとんどの方が年金生活者なので、日々のんびりと暮らしています。ビルギッタさんはここの住民の会の会長で、お話を伺った日も打ち合わせがあると忙しそうでした。

住民の会は「Vi-i-Viva」といい、「私たちは元気に暮らしている」という意味が込められています。2016年に10周年を迎えた会では、住民たちが楽しく元気に暮らすための話し合いを定期的にしています。文化イベントは重要で、話を聞く会、読書会、映画会、フランス語会、オペラコンサート観劇会、シアターの会、フットケア、ヨガ、卓球など、実にさまざまなアクティビティを企画しています。毎週金曜日の夕方には住民たちが集まって交流を楽しみます。その席でワイン宝くじがあり、毎月1回参加者にワインが当たります。日曜日には夕食会もあり、食べ物好きな人々が集まります。

住民のためのカタログが年1回更新され、共有施設、アクティビティの案内、レセプショニストや看護師、住民の顔写真と名前、ペットの顔写真と名前まで掲載されています。近所のショップやレストラン情報、近くの病院など、必要な情報も盛り込まれています。ビルギッタさんはシアターの会によく参加し、気に入った劇の内容を話し合うのがお気に入りだそうです。いくつになっても自分の意思で好きなように暮らす生き方は、長いこと元気でいられる秘訣のようです。

Written By 山本 由香
ストックホルム在住のデザインコンサルタント。スウェーデンのデザインとライフスタイル情報を発信するサイト「スウェーデンスタイル」を主宰しながら、スウェーデンと日本をつなぐ活動を行っている。北欧のパターンデザインに特化した事業スカンジナビアンパターンコレクションも展開中。

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