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2020.11.16

55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第5回 スウェーデンのペット事情

日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方のライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。

Written by 山本 由香/Photo by Peter Bruselid

スウェーデンではペットは家族の一員と認識され、一緒に暮らしやすい環境が整っています。バスや電車にもペットを乗せられ、ペットが病気になったために仕事を休むことにも理解があります。薬局にはペット専用のコーナーもあり、獣医からもらった処方箋の薬は、一般人と同じ窓口で買い求めます。日本のようにペットショップで子犬や子猫をショーケースに入れて販売することは禁止されていて、ブリーダーから手にいれるのが一般的です。引き渡しは、生まれてから3ヶ月以上経ってからで、それまでは母犬や母猫と一緒にいるべきと考えられています。近年では、スペインやルーマニアなどの野犬を引き取って里親を探すシステムや、警察に保護された犬を引き取る非営利団体があり、そのような犬の新しい飼い主になるケースも増えています。

今回は55プラス世代の3人の方に、ペット事情について伺ってみました。

レーナ・ダールベリさん(64)

10歳の時に両親が犬を飼い始めてから、ペットがいない人生はないというレーナさん。今飼っているのは8歳のチワワxパピヨンのチキータ。スペインで里親を探していた犬を引き取りました。その前は猫2匹と雑種の小型犬を飼っていて、猫が亡くなってから飼い始めたのがチキータ。小型犬は昨年15歳で亡くなり、今はチキータだけですが、レーナさんの家の中には5つ以上の犬の寝床があり、よく近所の犬の面倒も見るそうです。

インゲラ・ヨンデルさん(68)

19歳になるメス猫ヒルディングと暮らしているインゲラさん。19年前に娘の友だちに子猫が生まれて譲り受け、その後娘が自立して家を出た後もずっと一緒に暮らしています。猫のお気に入りの場所は暖房のある窓辺と床暖房になっているバスルーム。暖かい場所が大好きです。インゲラさんが仕事をしていると机の上をウロウロ歩き回ります。ソファにすわっていると寄り添ってきて、夜はベッドに上がって一緒に休みます。

カタリーナ・フスさん(72)

17年前から猫を飼いはじめ、その2年後に生まれたメス猫が加わり、今では17歳の母猫と15歳の娘猫、そして6ヶ月のオス犬ブルースと一緒に暮らしています。65歳で定年を迎えてから初めて犬を飼い始めましたが、昨年6歳で亡くなってしまい、その寂しさから同じ品種のブルースが3ヶ月の時にブリーダーから譲り受けました。「70代になってから子犬を飼い始めることには迷いはありませんでした。ペットがいない人生は考えられず、ペットたちには元気をもらっています」。ひとり暮らしのカタリーナさんにとってペットは家族であり友だちです。言葉は交わせなくても心は通じ合っています。何にでも興味津々の子犬は、いつもカタリーナさんの後にくっついています。ちょっとでもカタリーナさんの姿が見えないと不安になるようです。ブルースは猫たちとも仲良く暮らしています。

真にペット好きな人は、高齢になって面倒が見れなくなることを心配してペットを諦めることは、あまり考えていないようです。それでも万が一、面倒が見られなくなった場合の対策について、それぞれの方に聞いてみました。

レーナさんは、日頃から近所付き合いやペット仲間を持つことが大切だと言います。今でも自分が出かける時や病気になった時など、近所のペット仲間が犬の面倒を見てくれます。レーナさん自身もしょっちゅう仲間のペットの面倒を見ているのでお互いさまです。「ペット好きな人は、自分の年齢に躊躇して飼うのを諦めることはあまりないのでは」とのことです。

インゲラさんは、今の猫が亡くなったら、次を飼う気はないとのことです。猫との生活はとても大切な時間だけど、まだ仕事もしているし、やることもいろいろあるので、ペットがいない生活でもやっていけそう、とのことです。

カタリーナさんは72歳になって子犬を飼い始めることに特に迷いはなかったと言います。犬と暮らすことで外に出かけたり、人との出会いがあったり、自分自身もとても元気になります。年齢を気にしてペットを諦めるのは人生を諦めることと同じです。子犬を飼ったことであと15年は元気にしなければという励みにもなります。「万が一面倒が見られなくなったら、犬を飼っている娘に託すかもしれません。でも特に決めているわけではありません。私が家を空ける時はペット仲間に託すことはあります。今週は友人が旅行に行っているので1週間彼女の犬を預かっています。仲間やネットワークは大切ですね」

スウェーデンでも高齢になるとペットを飼うのを控える人たちがいますが、ペットと暮らすことで健康も維持できるし、人とのつながりもあり、高齢者にこそペットとの暮らしは有意義だという意見は多いようです。もちろん面倒が見られなくなる事態を考える必要はありますが、ネットワークを持ち、ペット仲間を作ることで、お互いに情報交換をし、助け合うことができます。最近ではフェイスブックのネットワークも増え、仲間も作りやすくなっているようです。スウェーデンにはリードを離して犬が思い切り走れる広いドッグパークがあり、飼い主たちの出会いの場になっています。サイズの小さい犬用のドッグパークもあり、同じ事情を抱えた飼い主同士が出会いやすい環境が整っています。仲間同士でペットの面倒を見ることでお互いのペットへの情もわき、その後飼い主に困難が起きたとしても、仲間同士で解決していけるような関係が築けているようです。実際ペット仲間はペットの名前は知っていても、飼い主の名前を知らないこともあるようです。そんなかわいいペットたちに何か困ったことがあれば、皆で支えようという環境が整っています。

Written By 山本 由香
ストックホルム在住のデザインコンサルタント。スウェーデンのデザインとライフスタイル情報を発信するサイト「スウェーデンスタイル」を主宰しながら、スウェーデンと日本をつなぐ活動を行っている。北欧のパターンデザインに特化した事業スカンジナビアンパターンコレクションも展開中。

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