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2020.11.16

第2回 エヴァ・ヘドルンドさん(68歳)
「ハイキングは私にとって"趣味"ではなく、生きる上でなくてはならないこと」

日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方のライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。

Written by 山本 由香/Photo by Peter Bruselid

郊外に建つ伝統的な建築様式の家

高台にある一軒家の広いテラスからは、湖と森の景色が見渡せます。エヴァさんがご主人のヨセフさんと2匹のネコと暮らすスウェーデンの伝統的な木造住宅は、長いベルギーでの生活から定年を迎えてストックホルムに戻った2011年に建てられました。久しぶりのスウェーデンで落ち着ける家を探していたところ、エヴァさんの出身地の名前のついたボーフスレンという伝統的な建築様式を見つけ、即決したそうです。ボーフスレン様式とは、スウェーデン西海岸のボーフスレン地区に密集している建物で、もともとは漁師や船員が海の近くで暮らすのに適した住宅です。三角屋根と立板パネルの外壁、均一な色が特徴です。白い窓枠に白い外壁の家が多いですが、ブルーが好きなエヴァさんは、外壁の色を薄いブルーにしました。機密性の高いガラス窓なので、1年中過ごしやすい室温になります。

冬でも暖かい室内では、ソファで読書する時間が増えます。インテリアは暖色が主流で、ブルーがアクセントになっています。

広いテラスにはハーブやゼラニウムなど、全部で80ある鉢はひとつひとつに名前を入れて、春から秋にかけてていねいに育てています。テーブル席が3つあり、朝食やフィーカ(コーヒータイム)、友人を招いての食事によって使い分けているそうです。「フレッシュなハーブティーはいかが」とテラスで育てているミントやレモングラスなどのハーブをティーポットに入れてお湯を注ぐと、フレッシュな香りがあたりにただよいます。

アウトドアの楽しさを知る

今年68歳になるエヴァさんはとてもアクティブで、家の近くにある湖や森での散策が日課になっています。「家でのんびり過ごすのは、私の性に合っていないわね。いつも動いていないと落ち着かないの」とエヴァさん。実は家事はあまり得意ではなく、お料理の担当はもっぱらご主人のヨセフさんだそうです。エヴァさんは、1987年にスウェーデンの新聞社のEU特派員として、ベルギーのブリュッセルに移り住み、特派員を辞めた後には欧州委員会の広報担当者となりました。定年を機に2011年にストックホルムに戻り、EUスペシャリストとしてストックホルム大学生のメンターやEUのシニアアドバイザーをしています。そのかたわら、余暇の楽しみであるハイキングやトレッキングの企画会社も立ち上げました。「趣味という言葉は好きではないわ。ハイキングは私にとっては趣味というより、生きる上でなくてはならないこと」と言います。ハイキングにはまったのは、ご主人と出会って一緒に出かけるようになってから。子どものころは家にこもりがちで、特にアウトドア系ではなかったのですが、スキーや山登りなどアウトドア好きなご主人の影響を受けて、どんどん好きになっていきました。「ハイキングといってもただ歩くだけではなく、瞑想もできることを知ってから、私にとっての習慣になりました」。自然の中を歩くことで心が落ち着き、精神が安定することを本で読み、ますますハイキングの奥深さに魅了されていきました。「ハイキングの話しをすると、永遠に終わらないわね」と今までの経験談は尽きず、家の奥からハイキングの本も持ち出してきました。

哲学とハイキング

最近エヴァさんは、ストックホルム大学の哲学のコースを受講しました。いくつになっても学ぶことは楽しく、読書も大好きで、自宅には何冊もの本があります。哲学の力が人々を精神的に楽にしてくれることを知り、ハイキングにも取り入れるようになりました。ハイキングやトレッキングというと山登りが主流だった昔に比べ、最近は教会を訪ねる巡礼や瞑想するハイキングが人気だそうです。エヴァさんが秋の週末に企画したハイキングに参加してみました。ストックホルム市内からバスで30分ほどの郊外にある国立公園を5時間ほど散策するもので、20名ほどの参加者がいました。このハイキングはただ散策するだけでなく、自然の中に身を置きながら、ところどころで自分を見つめなおす時間がありました。ハンス・エリックという放浪巡礼司祭が唱えた、ハイキングの途中で7つのキーワードについて考えることで、日常的なストレスや心配事から解放される瞑想の時間を持つものでした。その7つのキーワードとは、自由、シンプル、沈黙、くよくよしない、ゆっくりと、スピリチャル、分け与える心です。抽象的なキーワードの答えを出すのは難しそうですが、深く考えずに直感的に浮かんだ思いを言葉にします。慌ただしい日常生活では15分じっとしていることは難しいけれど、自然の中ではそれが可能です。無の状態になることで身も心もリフレッシュでき、大自然の美しい風景を見るだけで心が洗われ、生きるエネルギーがみなぎってきます。エヴァさんが企画するツアーはスウェーデン国内にとどまらず、スイスアルプスや南スペインのアンダルシア、アイルランドにも行きます。「いつか日本でもツアーを企画してみたい」というエヴァさんは、年齢を重ねてなお、目をキラキラと輝かせています。

Written By 山本 由香
ストックホルム在住のデザインコンサルタント。スウェーデンのデザインとライフスタイル情報を発信するサイト「スウェーデンスタイル」を主宰しながら、スウェーデンと日本をつなぐ活動を行っている。北欧のパターンデザインに特化した事業スカンジナビアンパターンコレクションも展開中。

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