55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第6回 スウェーデンのリサイクル事情
日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方のライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。
Written by ブルセリド山本 由香/Photo by Peter Bruselid
世界レベルのエコ住宅地での暮らし
スウェーデンでは、住宅地に分別リサイクルボックスが設置されています。通常は、透明ガラス、色付きガラス、プラスチック、ダンボールや箱などの厚紙、新聞や雑誌、金属の6種類の分別。最近の新築住宅地には、生ごみをたい肥に変えるコンポスト専用のリサイクルボックスが設置されているところもあります。手軽にいつでも捨てられる環境は、リサイクルを進める上でも大切なことでしょう。
環境に配慮されたストックホルム市内の大規模な集合住宅地「ハンマルビー・ショースタッド」は、世界レベルのエコ住宅地として有名ですが、実は2004年のオリンピック候補地としてストックホルム市が名乗りを挙げた地区。結果的に選ばれませんでしたが、早くからエコシステムの進んだ住宅地として開発が進められました。
2002年から暮らすラーシュ・ヘドベリさん、2009年からのイングリッド・レフダールさん、2007年からのペール・ニルソンさんは、みなさん55プラス世代で、自治体の役員をされています。大規模な住宅地なので自治体もいくつかありますが、彼らの自治体では近々、地熱を利用した暖房設備のための地下工事が始まるそうです。
エコサイクルが実現されているコミュニティ
この住宅地には、各棟の1階にリサイクル専用倉庫があり、細かく分別されたボックスが設置され、それぞれのリサイクルに関する注意書きがあります。たとえば新聞や雑誌のリサイクルボックスには便箋、包装紙、パッケージは捨てられません。この倉庫には、監視カメラもあります。
最近ではどの家のキッチンにもあるリサイクルボックス。ここには2000年当初からすでに設置されていました。またスウェーデンでもキッチンはIHが主流になっていますが、ここのキッチンはガスのところも多いそうです。ゴミを燃焼する際に発生する熱は暖房に利用され、汚水は処理されてバイオガスとなり、市バスや住宅地の調理台のガスキッチンに再利用されています。イングリッドさんが住む棟の屋上はソーラーシステムになっていて、自家発電として利用されています。

ここには、環境にやさしい暮らしをしたい人々が多く集まっています。子どもが巣立って一軒家が広くなった55プラス世代が、家を売って引っ越してくることも増えているそう。市内にありながら自然が身近にあり、住民のコミュニティもしっかりしていて、暮らしやすい環境が整っています。
Written By 山本 由香
ストックホルム在住のデザインコンサルタント。スウェーデンのデザインとライフスタイル情報を発信するサイト「スウェーデンスタイル」を主宰しながら、スウェーデンと日本をつなぐ活動を行っている。北欧のパターンデザインに特化した事業スカンジナビアンパターンコレクションも展開中。