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2023.10.06

55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第9回 いつからでもスタートできる新しい人生

日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方ののライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。

Written by ブルセリド山本 由香/Photo by Peter Bruselid

長年の夢を叶えて牧場主に
60代からの新たな人生を満喫

視界の半分には大きな空が広がり、のどかな麦畑や牧草地がどこまでも続くパノラマ。山がなくて平坦な土地が広がる南スウェーデン、スコーネ地方の典型的な風景です。西海岸の半島にあるボースタは、古き良き時代の面影が残る海に近いのどかな街で、裕福なスウェーデン人が夏を過ごす場所として人気があります。7月には国際的なテニス大会「スウェーデンオープン」が開催され、多くの人々でにぎわいます。

南スウェーデン、スコーネ地方、ボースタの海の見える風景
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ボースタの街から見える海
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ボースタの海辺に残る、昔の漁師が使っていた小屋 ©Peter Bruselid
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海から臨むボースタの街 ©Peter Bruselid
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今回取材したリリー・スカービーさんは、15歳のときから夢見ていた牧場主になるために、2017年にストックホルムからボースタに移り住みました。リリーさんは組織人事コンサルタントとして企業のリーダー育成などを手がけ、現役時代は忙しく働いていたそうです。趣味は乗馬と絵を描くことで、ストックホルムでも馬を所有し、ギャラリーも運営。動物が大好きなリリーさんは、動物たちと暮らせる場所としてボースタにある牧場を手に入れ、60歳を過ぎてから新しい生活を始めました。牧場には馬や羊がいて、隣接する広い庭のある自宅ではニワトリを放牧しています。愛犬と愛猫も3匹ずついて、いつも動物に囲まれた暮らしを送っています。

リリーさんの牧場のまわりにある麦畑 ©Peter Bruselid
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リリーさんの牧場のまわりにある近所の家 ©Peter Bruselid
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1890年代に建てられたリリーさんの家
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取材にうかがった日、門を入ると2匹の愛犬が飛び出してきて大歓迎してくれました。ルーシーは17歳の高齢ですが、飛び出てきたモルゲンとイサクはこの2年で新しい家族になったそう。3匹は、いつもリリーさんの後をついてまわります。

入口で待つ3匹の犬
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動物に囲まれた暮らしは憧れますが、のんびりしている時間はほとんどありません。朝は馬小屋にいるすべての馬を牧場に放つことから始まります。その後にニワトリ小屋に行って餌をやり、産みたてのたまごを収穫して小屋を掃除し、9時近くになってからやっと朝食になります。馬小屋にはリリーさんの馬がいるほか、預かって世話をしている馬主たちの馬も。馬主たちは日中に牧場に来て自分の馬の世話をし、乗馬の練習をするのです。

馬を牧場に連れていくリリーさん ©Peter Bruselid
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牧場で馬をストレッチさせているリリーさん ©Peter Bruselid
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ニワトリに餌をやるリリーさん ©Peter Bruselid
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私たちが滞在した初日は羊の品評会に参加するため、朝食もあわただしく羊たちを連れて出かけていきました。羊の品評会は「羊の日」という毎年恒例のイベント。地元の家族連れがたくさん訪れます。自慢の羊を訪問客に見せたり、広場でシープドッグが羊たちを誘導するパフォーマンスを披露したり、羊毛の手編みのセーターなどが売られていたりして、自然豊かな地域ならではのイベントでした。

羊の品評会に連れていく羊を確認しているリリーさん ©Peter Bruselid
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羊の品評会の様子 ©Peter Bruselid
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羊を誘導するシープドッグのパフォーマンス ©Peter Bruselid
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羊の品評会の会場にある古い小屋のカフェ ©Peter Bruselid
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カフェの庭で売られているフィーカのお菓子 ©Peter Bruselid
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60歳を超えて出会った
新たなパートナーとの暮らし

最近リリーさんが力を入れている企画は、子連れの家族に動物にふれる機会を与えることです。多くの子どもたちは動物が大好きですが、直接ふれる機会はほとんどありません。この牧場に来れば、ニワトリに直接餌をやったり、産みたての卵を収穫したり、乗馬体験をしたりと、さまざまな動物とふれあうことができます。羊をなでたり、人懐こい犬や猫たちと遊んだりすることは、子どもたちにとって忘れがたい貴重な体験になります。

牧場の景色 ©Peter Bruselid
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今回の私たちの滞在中には、スイスからやってきた子連れの家族がこの企画を体験しました。4歳の女の子はポニーに乗せてもらい、家族で馬車に乗って散策し、羊に餌をやり、動物とのふれあいを楽しんでいました。

子連れのゲストを乗せる馬車の準備の様子
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子連れのゲストが乗った馬車 ©Peter Bruselid
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子どもの乗馬体験
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リリーさんは趣味の絵を展示するためのギャラリーを牧場内に建てています。自宅の2階はアトリエになっていて、忙しい中にも時間を見つけて、ボースタの景色や動物たちをモチーフに油絵を描いています。

リリーさんのギャラリー
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ギャラリー内のリリーさんの油絵
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プライベートでは、1890年代に建てられた家の改装を少しずつ進めていて、古いキッチンをベッドルームにして、テラスに近い場所に新しいキッチンを作るという大がかりなリノベーションを行いました。そのときに仕事を引き受けた職人のピーターさんが、今のパートナーです。

リビングルーム ©Peter Bruselid
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リノベーションされたキッチン
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リリーさんは4人の子どもと5人の孫がいますが、だいぶ前に離婚していて、長い間おひとりさまを貫いていました。再婚する気は特になかったそうですが、ピーターさんとは話も合い、一緒にいて楽しいことに気づき、2022年に牧場で結婚式を挙げました。ピーターさんは職人の仕事を続けながら、リリーさんの牧場も手伝ってくれて、今までひとりで抱えていたことをふたりで共有できるようになり、とても気持ちが楽になったそうです。

2022年の牧場でのウェディングに向かう人々 ©Peter Bruselid
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2022年の牧場でのウェディング、リリーさんとピーターさん
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離婚率の高いスウェーデンでは独身の熟年者がたくさんいますが、60歳を超えて新しいパートナーを見つけるのは珍しいことではありません。いくつになっても自分の幸せを追求し、やりたいことを日々思いっきりやって過ごしているリリーさんには、学ぶことがたくさんあります。

リリーさんの牧場を地上から撮影 ©Peter Bruselid
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人生100年と言われる今日この頃、60代はまだまだ楽しめる時間がたくさん残っています。動物や自然に囲まれて好きな時間を過ごしていることが、健康の秘訣です。それに加えて気の合うパートナーがいることで楽しみも共有できて、より充実した人生を満喫しています。

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