55+(55歳からの北欧ライフスタイル)
第10回 ヘレン・シェリン (Heléne Kjellin) さん 63歳 「好きなことをすべて仕事に」
日本では「アクティブシニア」と言われますが、スウェーデンには「55+(フェムティオフェムプルス)」という言葉があります。
これは、55歳からの熟年世代、65歳で定年になる10年前から老後の人生設計を始めようという考え方です。
子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになる「55プラス」世代。
そんな心身ともに充実した方ののライフスタイルを、北欧スウェーデンから日本へお届けします。
Written by ブルセリド山本 由香/Photo by Peter Bruselid
ヘルシーライフの秘訣は いつも笑って暮らすこと
栄養療法士でハイキングガイドでもあるヘレンさんは、60歳を超えてますます元気です。彼女のモットーは「身体に最適の食事で、いつも元気ハツラツ!」。
ヘレンさんに初めてお会いしたのは、ギリシャのクレタ島のハイキングツアーに参加した時でした。日照時間が短くなる秋に、太陽を浴びに行くためのスウェーデン人団体向けハイキングツアーを彼女が企画していたのです。きめ細かいサービスが気に入り、その後も何度か彼女のツアーに参加しました。彼女が企画するツアーは南フランスやカリブ海など暖かい場所に行くものが多く、参加者が楽しめるようにとさまざまなイベントを取り入れています。
栄養療法士であるヘレンさんは、総合的な健康カウンセリングを行ったり、ケータリングの仕事を請け負ったり、さまざまなヘルシー企画も行なっています。彼女がレシピを考えたデトックス企画に参加した時には、スムージーなどを中心にした食事を1か月ほど続けたことで、健康的に体重を5キロ落とすことができました。このように、自分の知識や経験を生かした仕事を楽しんでいる55プラス世代のヘレンさんのライフスタイルを日本の皆さまにもお伝えしたいと思い、今回取材させていただくことにしました。
ご自宅は、ストックホルムから西に車で1時間ほどの古都マリエフレッドに近い場所。ヘレンさんに教えてもらった地図をたどってガタガタの一本道をしばらく走ってみましたが、どこまで行っても家が見つかりません。本当にここに人が住んでいるのかと思った頃に、ようやくヘレンさんの家が見えてきました。湖を臨む牧場のある広い土地に夫のペーテルさんとふたりで暮らしています。
「ここは地図で見つけるのは難しいので、言われた通りに一本道を来れば辿り着くのよ」とヘレンさん。大自然の中でそれは健康そうな暮らしをしています。
栄養療法士、ケータリング、ハイキングガイド、ダンス講師と、好きなことをすべて仕事にしているヘレンさんは、お会いするたびにますます元気になっている印象です。ヘルシーライフの秘訣は、ストレスをためず、身体にいいものを食べ、適度な運動をして、常に笑って暮らすこと。55プラス世代にとって、ヘレンさんのように自分の身体に合った食事をとり、自分のしたいことを仕事にする人生は、元気ハツラツに生きていくためにも目指したいことですね。
健康管理に高い関心を持つヘレンさんは、病気の症状を和らげるために薬を飲むよりも、根本から改善することを基本的な哲学としています。ご自身が病気をして抗生物質やホルモンなどを摂取していた時期がありますが、免疫力が高まった現在では薬もワクチンも必要のない生活を送っています。
ヘルシーライフに欠かせないのは、自分自身に必要な栄養を取り、適度な運動と休息を取り、人々と会って笑い、楽しく過ごすことです。今ではどのような状況でも安心して生活できるようになりました。これからの人生でも、多くの人々が健康的な暮らしを送るための正しい道を見つける手助けをしたいと考えています。
ヘレンさんは高校を卒業してから28年間旅行会社で働き、2014年に退社して栄養士の資格を取りました。1993年からストックホルム郊外の牧場のある広い土地に建つ一軒家に暮らし、ふたりの子どもを育てました。子どもたちが独立した今は、夫のペーテルさんと18匹の羊と暮らしています。
ヘレンさんのハイキングツアーは、スウェーデン人にとっての憧れの地である南国へのツアーがメインで、私たちも今までにクレタ島、南フランスのコルシカ島、カリブ海にあるフランス領のグアダルーペのツアーに参加しました。いつも10-20人くらいのグループツアーであり、ヨガやハイキングや観光がセットになった内容の濃いメニューです。
ハイキングはちょっとキツめのコースもありますが、参加者たちと励まし合って最後まで歩けた時の喜びはひとしおです。ヘレンさんが得意とするサルサダンスもメニューに含まれていて、一緒に参加した人たちとの一体感が楽しいツアーです。暖かい地で心身ともに健康になるツアーはいつも早くに満席になるそうです。
ケータリングではヘルシーなメニューが主流で、品質の高い素材を使った手作りの料理を提供しています。とはいえ、常にヘルシーであるべきという価値観を押し付けることはなく、お客さまから注文された料理をおいしくつくるように心がけています。
お祝いのケータリングではスウェーデンで人気のサンドイッチケーキの注文が多く、市販のパンは使わず、なるべくヘルシーなパンや素材を使っています。