ウッドワン「無垢の木のキッチン」の誕生秘話が聞きたい!(後編)
今回の特別インタビューは、ウッドワン商品企画室の池岡知紀さんと野間学さん。「無垢の木のキッチンはご家族と一緒に時間を過ごしながら育っていくんです」「パーツの開発にも、それぞれにストーリーがあるんですよ」と、いろいろ教えていただきましたが、後編ではさらに深いお話をうかがいます!
(写真左)商品企画室 池岡知紀さん
(写真右)商品企画室 野間学さん
木の良さを知るお客さまに向けた独自のこだわり
――池岡さんは、ウッドワンが旧ベルテクノ、現在のベルキッチンと2006年に営業統合をして、無垢の木のキッチンを商品として立ち上げた頃から関わっていらっしゃるんですよね。
池岡 そうですね。実はその前から、ウッドワンでは他メーカーさんに無垢の木の扉をキッチン用として提供していたこともあるんです。そこからベルテクノと一緒になって、ウッドワンの各部署からいろんなメンバーが行って。ベルテクノでは無垢の木のキッチンはつくっていなかったし、うちとしてもこれからはもう一個上の技術で内製してキッチンをつくっていこうというところでした。
――当時は、ベルキッチンでも「木のキッチンを形にするにはこんなに塗装が必要なのか!」と驚きながら技術をいちから磨かれていったとうかがいました。
池岡 はい。工場に塗装のブースをつくるところからやっていますからね。
――スウェーデンハウスリフォームのお客さまで言ったら、今はかなりのシェアがあると思います。とても人気がありますので。
池岡 御社とは親和性がありますよね。木の良さをちゃんとご存知のお客さまなので。目指したのは、そこなんです。お客さまをセグメントして、100人のうちのひとりにでも、ちゃんと届けようと。
――価格競争をするようなキッチンではなく、ものの良さを知って選んでくれるファンをつくろうということですね。
池岡 ちゃんと選んでもらえるキッチンを。実は当初はアパートのキッチンが多かったんです。賃貸用など、数は出ていても設備さえ整っていれば、あとは値段という感じで。でも、それじゃだめだと徐々に舵を切って、デザインを統一しながら、ブランド表現にも力を入れていきました。
――2008年に最初の無垢の木のキッチン「スイージー」が発売されて、2013年には家具のシリーズ、2014年には無垢の木の洗面台や収納も。今ではTVドラマのセットとして使われたりして、おしゃれなキッチンのメーカーとして知られるようになりましたよね。
野間 僕が入社したのは、「スイージー」でちょうどウォールナットを使ったものが発売された年でした。最初は当社が自社で栽培しているパイン材がメインでしたが、徐々にほかの樹種も出て。
池岡 パインは針葉樹なので広葉樹も入れようとオークを。オークは木目のはっきりした環孔材になるので、目のやさしい散孔材のメープルも入れて。それから濃い色みが特徴的なウォールナットも入れました。現在は4種ですが、今後は国産材も始める予定です。
――ウッドワンは昨年から、広島県庄原市のグループ会社、フォレストワンで国産材の工場も稼働され始めたんですよね。国産は国産の良さがあると思うので、そちらも楽しみです!
池岡 でも、ファンになってもらえる良いものを追求すると、どうしてもコストがかかるものになるので、当初は社内でももう少し安くならないかと言われました。無垢の木のキッチンがようやく軌道にのったのは2016年くらいからだったと思います。「FRAME KITCHEN(フレームキッチン)」を出したり、ワークトップの天板を改良したりして、雑誌広告も出して。
野間 そうですよね。僕は入社して9年営業をしてから商品企画室に配属されたのですが、まだ営業をしていた頃に2016年を迎えて、お客さまの評判の声が変わってきたのを感じました。市場でも、ウッドワンのキッチンがぐっと認識いただけるようになりましたよね。2018年には「スイージー」発売10周年ということでリニューアルをしましたが、その際に引き出しのカトラリートレーのパーツに扉と同種の木材を使うようになったのもご好評いただいています。
――そういうちょっとしたこまかな仕様がうれしいんですよね。
いろいろなニーズにも寄り添う木のキッチンづくり
池岡 最初は自社で育てているパイン材をメインに始まったので、無垢の木のキッチンには可愛いイメージを持たれているところもあると思うんですけど。最近では、設計事務所の方の現場でも結構使ってもらっているんですよね。
――ウッドワンにはモダンでスタイリッシュな印象のキッチンが多いですよね。
池岡 その方向性も、2016年くらいからだんだんと。実際に設計事務所の方とかにも、「これで十分じゃん」って言われるようなキッチンになっています。プランするのも楽だし、一個一個図面を引かなくてもやってもらえるし、フルオーダーじゃなくても、この素材でここまでできて、この価格なら、逆に安いと。
――御社のパイン材は節目をつくらないような育て方をされているので、そういったところにも美しさがありますよね。
池岡 そうですね。節のない価値というものも伝えていきたいです。木目の美しさを活かす柾目取りには、反りにくく狂いが少ないという性質もありますし。
――そういうものは写真でもすごく伝わってきますが、展示場へ来られて実物に触れるのも、お客さまにとってはまた大きなインパクトになるのではないでしょうか。
池岡 本物であればあるほど、やっぱりそこは強いですよね。カタログも最近はどこもレベルが上がって本物かどうかわかりにくくなってきましたが、実際に目の前にすると、人間の目ってやっぱり本物だとわかるんですよね。無垢の木も、ステンレスや石も、なんとなく厚みがあるものかそうでないものかというのがあって。
野間 わかりますよね。手触りなどもやっぱり違いますし。
――熱を伝えにくい無垢の木は、触ったときの温度も、夏はひんやり、冬は温かみがあるという違いがありますよね。ウッドワンのキッチンは、つまみなども触り心地のいいものが。鍛冶職人さんがつくったアイアンの取手なども印象的でした。
池岡 あれも叩いてつくる素材の良さですよね。うちでは、経年してもいい素材を使うこだわりがあります。陶器もあれば、だんだん変化していく真鍮や銅もある。いつも選択するときには、流行っているかどうかじゃなく、「どっちがウッドワンの無垢の木のキッチンらしいか」を考えます。ただの流行りものは、僕らじゃないかなと思うので。
野間 金額が明確な規格型シリーズとしては、2023年に「cono:mamma(コノママ)」も発売しています。「スイージー」などは自由度が高い分、やっぱりちょっと金額感も変わってきてしまうので。
――木のキッチンの入門編としても、価格が明確なシリーズがあるのは良いですよね。こちらは野間さんも開発にも携わられたのですか?
野間 はい、このあたりから入っていますね。「コノママ」に関しては、無垢ではなく突板の木を使っているのが大きく違う点です。樹種はパインとウォールナットとオーク、グレードは3つに分けていますが、一番高いグレードのものでは、砂漠の上に風が吹いたときにできる風紋の模様を意識したデザインなども。商品名の通り、このまま満足して使っていただけるように機器なども厳選しています。「このプランでいくらですよ」と、わかりやすくパッケージングした形ですね。
――まさに、プロのセレクトでパッケージングされた商品という感じですね。
野間 そうですね。デザインの雰囲気としても、こちらも設計士さんが好むような空間にしっかり馴染んでいけるキッチンになっています。
――「コノママ」のシリーズも、スタイリッシュでモダンな雰囲気が素敵です。間口が狭いキッチンにも対応した「ちっちゃいsu:iji(スイージー)」のシリーズも用意されていて、それぞれのニーズがありそうですね。アイアンと無垢の木の組み合わせがおしゃれな「フレームキッチン」も、お気に入りの料理道具が並べられる見せる収納が印象的ですし。ウッドワンの無垢の木のキッチンのラインナップを見ると、ひと口に木のキッチンと言っても、いろいろなスタイルが楽しめるものだなと改めて。これからの展開も期待しております!