ウッドワン「無垢の木のキッチン」の誕生秘話が聞きたい!(前編)
決してひと筋縄ではいかない自然の素材。無垢の木のキッチンを実現するためには、工場でも研磨や刷毛塗りなど手作業も欠かせず、それだけの手間をかけてでも「本物を届けたい」という思いが伝わるものづくりの現場でした。そんなウッドワンのキッチン開発秘話を、商品企画室のおふたりにうかがいます!
(写真左)商品企画室 池岡知紀さん
(写真右)商品企画室 野間学さん
万人に向けた製品ではなく本当のファンに届くものづくりを
――今回は工場も見学させていただきましたが、ウッドワンのキッチンは、標準のグレード自体が高いのも魅力ですよね。
池岡 それは始めた当時から意識しているところですね。ちゃんと木の良さをわかってもらえる方のところへ、長く使える良いものを届けたいので、素材にこだわる分すごく安くはならないけれど高すぎない、手の届く価格にしようと。
――取手なども、標準で好みのものが選べるとお施主さまから好評です。オプションで選ぶものも気になるものが多くて。
野間 それぞれのパーツにストーリーがあるんですよね。直近だと、去年発売した銅の取手なども。これは、富山県の職人さんがひとつずつ形にして塗装しているものなのですが、木の扉に合わせたときの雰囲気を見ながら、微妙な色みの調整を何度もやり直してもらってようやく完成しました。取手とかつまみって、すごく小さいんですけど、これひとつでかなり印象が変わってきたりするんです。特に銅や真鍮は、木のキッチンと一緒にだんだん経年変化していくので、そこも含めて楽しんでいただけるパーツです。
――そういった商品は一点ものなところがあるので、きちんとお客さまの数だけご用意できるのもすごいことです。
池岡 そうですね。もちろん手づくりなので一個一個、多少は形が違うのですが、木の木目だって違いますからね。そこは、そういうものが好きなお客さまに響くものを追求していくために、社内で何度も話し合ったところでもあります。
――まさに、ファンに届ける商品ですね!
暮らしの「背景」としてご家族とともに年を重ねるキッチン
池岡 うちはもともと建材メーカーですが、建材の商品って出荷時は未完成なんです。ハウスメーカーさんに工事してもらって、初めて完成するもので。さらに言えば、僕らの木の商品、キッチンや洗面台、テーブルなども、取り付けたときが完成のようで、完成じゃない。僕らは「経年美化」と言っているのですが、年月を経るほどにだんだん完成していくところがある。そうしてご家族と一緒に時間を過ごしながら育っていくというか。
――スウェーデンハウスも、徐々に木の色あいが深みを増していくのが醍醐味です。無垢の木ならではの魅力ですよね。
池岡 ウッドワンは林業から始まった会社で、原木から製品まで一貫生産しているので、やっぱり木の材にDNAがあって。さらに言えば、もともと建材メーカーなので。建材って「背景」なんですよね。床も、ドアも。でも、キッチンというと、どこもドーンとメインに出そうとする。特に昔は、真っ赤なキッチンとか、そういうものが多かったんです。そのなかでもうちは、キッチンも暮らしの「背景」にするということに徹してきました。
――なるほど、キッチン単品の存在感よりも、住空間にいかにとけ込むか、ですね。
池岡 そう、邪魔をしないというかね。さり気なく家族のそばにいる存在としてのキッチンをつくろうと。
――それは、時代が追いついてきたところもあるかも知れませんね。昨今はキッチンも家具のように、暮らしにとけ込む存在としてデザインされる流れがあって。
池岡 当時はもっと目立つデザインがいいんじゃないかと言われましたが(笑)、実は一貫しているんです。長く使っていただくために、収納のつくりなどもシンプルにすることを基本にしています。
――ラボでは、最近あまり見なくなった開き戸の良さなども改めて教えていただいて、目からウロコでした!
池岡 木のキッチンって、まだまだ一般的には水とか調味料がついたりするのが、すごく危険だと思われているんですよね。たぶん、塗装などがされていない木をイメージしているのだと思うのですが、実際に調味料をつけて簡単に拭きとってみせると、安心していただけます。
――塗装があれだけしっかりされていたら、あとはメンテナンス次第で。実は木ってすごく長持ちする素材なんですよね。
池岡 法隆寺の五重塔のように、木造建築の古いものはたくさんありますからね。
――本当ですね。私たちもこの木という素材の素晴らしさを、これからも発信していければと思います!
後編へと続く