図解！リフォームの裏側 徹底解剖
制約条件がある中で、スウェーデンハウスの構造・性能を保ちつつ、いかに魅力的で豊かな空間を実現するかというのが設計担当者の腕の見せどころです。ここで、情報誌「リ・ライブ」VOL.18に掲載した実例をご紹介。普段は見られないリフォームの裏側をプロの視点から徹底解説します！
ポイント1 既存建物と増築部分の構造
増築を考えるときに一番重要なポイントは、スウェーデンハウスの強固な構造を損なわないように計画・施工しなければならないということ。
大屋根のアルムに増築部分を接続するという今回のリフォームでは、既存建物にどのような力が加わるかを検証したうえで、補強方法を検討しました。
増築部分の屋根の梁は既存建物の構造部材で受ける必要がありますが、トラス（三角形の屋根の骨組み）が設置されていたため、上部、下部それぞれに挟み込むように補強材を設置して強度を確保しました。
何か月もかかる増築工事では、工事期間中の雨天対策も重要。構造材が濡れないように、仕上がった部分はしっかりと養生します！
ポイント2 レンジフードの排気ダクトや電気配線など、目には見えない部分の処理方法
増築側の壁にレンジフードの排気口が設置されていたため、ダクトのルート変更が必要に。増築部分の小屋裏を通す形でルートを再構築しました。
施工段階でIHクッキングヒーター用の電気配線が動かせないことが発覚。化粧柱の中に配線を埋め込む形で、空間デザインの一部になるように設計しました。
ポイント3 造作家具の再利用
まだまだ使える愛着のある造作家具を、今回のリフォームで再利用しています。
リフォーム前のリビングに置かれていた造作家具。新築のときからの思い出が詰まったものでもありました。
ルーバー建具は、増築部分の個室でパネルヒーターの目隠しとして再利用。
収納キャビネットは増築部分のクローゼットに組み込みました。
そのほか交換前のキッチンキャビネットも、新たに天板を造作してパントリー収納として再利用しています。
ポイント4 増築部分の接続方法と窓の再利用
増築部分でも、実はさまざまな工夫をしています。
開口部の位置・幅を変更しても構造的に問題がないことを確認したうえで、接続部分の仕様を決定しました。
スウェーデンハウスの窓は適切なメンテナンスが施されている場合、移設して長く使い続けることができます。
接続部分にあった窓は、オーナー様が大切にお手入れしてくださっていたこともあり、ダイニングルームの窓に再利用できました。
住みながらのリフォームであったため、生活への支障ができる限り少なくなるように増築部分が仕上がってから既存建物と接続する形をとりました。接続前は構造用合板で開口部をふさぎ、既存建物にゴミやチリが入りにくいように配慮しています。
フローリングは、新旧で仕様が変わる部分に見切り材を入れて違和感なく施工。増築部にメリハリがつくように、あえてデザインも変えています。新しい床（写真左側）には、印象的な無垢の寄木張りフローリングを。EIDAIの「銘樹パーケット」、パターンは「エルスパイラル」を選んでいます。
ポイント5 オーナー様のこだわりを意匠面に
初めてお打ち合わせに伺ったとき、大切に使い込まれたリビングの造作家具や北海道の木工作家の椅子、随所に飾られたオブジェなどを拝見し、オーナー様の「木」に対するこだわりと深い愛情が感じられました。既存部分のあたたかみのある空間の雰囲気を大切にしつつ、増築部分に置く予定の木目のピアノやダイニングテーブルなどが映える空間にできるかがデザイン計画のポイントとなりました。
ロフトへの階段は、箱形の階段などいろいろ検討しました。最終的にはアイアンと木の組み合わせのデザインを取り入れ、納まりをかなりこだわって特注しました。
木工作家の作品や旅の思い出が詰まったオブジェなど、オーナー様が今まで大切に集めてこられたものを綺麗に飾れる場所をどう提案できるかという点も、設計の重要なポイントとなりました。
特に、見せる部分と隠す部分をどう配置するかは最も重視した点です。
キッチンと玄関ホールの間の壁には抜けを作ってオープンラックを、リビングには地震が起きても転倒の心配がない壁面収納を設置しました。壁面収納の耳付き板は、木の質感を愛するオーナー様がお選びいただいたものです。
新築と異なり、既存建物の構造や建築関連の法規など、さまざまな制約条件があるなかで、設計段階はもちろん、施工中に起こる課題に対処し、オーナー様の理想とする空間をいかに創り上げるかがリフォームの醍醐味です。
これからもオーナー様の暮らしとスウェーデンハウスをアップデートするために、力を注いでまいります。