あのユニットバスの開発秘話が聞きたい!-LIXIL スパージュ
温泉を愛する日本の人々に、その体験価値を再び
「お風呂のリフォームをしよう!」と久しぶりに最新のものをチェックすると、その進化に驚かれる方が多いのではないでしょうか。
そんな話題の商品、人気のシリーズについて、開発に携わった方々に直接インタビュー。
株式会社LIXILの浴室開発部・八木信彦さん、浴室商品部・道端真伊子さん、浴室営業部・半田拓さんに、発売までの道のりと、そのこだわりを教えてもらいました!
温泉を愛する日本の文化から導き出されたお湯の体験価値
「一日の疲れをほぐすために、お風呂にはとことんこだわりたい!」という方にファンが多いのが、肩湯の機能などで知られる「スパージュ」シリーズです。
最初が2014年に発売されてから、何度かのモデルチェンジを経て2021年に最新モデルが登場しています。
「LIXILのシステムバスルームは、施工性や速乾性、保温性、清掃性など生活を便利にするためにどんどん進化してきましたが、そういった便利さの追求は続けながら、もっと〝豊かさ〞みたいなところも表現できないかと考えて生まれたのが、このスパージュなんです」
そう語るのは、スパージュの開発に携わる八木さん。そこには、日本の入浴文化という原点があったといいます。
「温泉を愛する日本の情緒的なもの、水に対する神聖な気持ちに着目し、お湯を楽しむという体験価値を最大化することをコンセプトにしています!」
あの肩湯は、いったいどのようにして開発されたのでしょうか。
「肩湯の発想としては、温泉の滝口から流れる薄い膜状のお湯、その音色なども含めた心地好い体験を形にしたものです。
たとえば、湯疲れしないようなお湯の厚みや速度、日本人の体型に合わせた幅、肩から最適な状態で静かに流れ落ちる飛距離、そうしたいろいろなものを科学的に突きつめて設計しています。結果的にああいうお湯の形になったわけではなく、まず初めに一番理想のお湯の形をしっかり定めてから、そこに向けてつくり込んで開発されたものなんです」
「本当にたくさんの人間が関わっていますよね」と、商品部の道端さん。
「はい。浴室開発部の人はもちろん、ほかの開発部の人にも協力してもらいながら、外部の研究機関とも連携をとりました。実際にお風呂に入ってみて脈を測ったり、お湯の形を変えながらデータをとったり、本当に皆、手がふやけるくらいお風呂に入っていましたよ(笑)。 この理想のお湯の形を実現するというのが、非常に難しくてですね。水が途中で途切れてしまったり、美しく出なかったり、そういった試行錯誤がたくさんありました。最初は浴槽から機械がはみ出したような試作品から、それをどんどん小さくして、もう100個くらい試作して、ようやくこの形に収めたんです」
調光調色できる照明や「肩ほぐし湯」などの進化も
2018年には、調光調色できる照明が登場。2021年には肩湯がさらに進化し、「肩ほぐし湯」「腰ほぐし湯」の機能がプラスされました。
「肩湯に関してはもう10年くらい基礎研究を続けていますが、この肩や腰をほぐすためのウェーブ吐水も非常に特徴的な水の出方で。電動的な動力ではなく、水が流れるだけの圧力変動でこの動きがつくり出されているんですよ。シャワーヘッドなどもそうですが、この水をコントロールする技術というのは、LIXILの強みでもあります」
またお風呂空間そのものも、表情にこだわったといいます。テーマは「無機質なシステムバスからの脱却」。
「壁なども大判のセラミックパネルを異サイズで組み合わせてリズムを生むようなものをデザインしたり、床にはまるでリビングのような木目調のものをラインナップに加えたりしています。浴槽の側面にファブリック調の素材を追加したりしているのも、これまでの樹脂のイメージを一新するものです。そうしたところでも、さらに居心地の好い空間が目指せればと考えています」
さらなるリラックスを求めてグレイッシュな空間も登場
「これまでのスパージュのイメージは、黒やモノトーンの重厚感のある印象のものが多かったのですが、今回のリニューアルでは、ナチュラルで心理的にもリラックスしていただける空間が追求されましたよね」と道端さん。
「高級感のあるダークなカラー、ツヤのあるようなものが多かったですが、新しく加わったものは少しやわらかい空間になりましたよね。トレンドとしても、今はマットな感じやグレイッシュな落ち着いた空間が好まれている傾向にあるので、そこに対してさらに提案の幅を広げた形です」
あれもこれも機能を盛り込みたい!を叶えた開発魂
LIXILのシステムバスルームの中でも、最高グレードにあたる「スパージュ」。そのお値段も気になるところです。「実際に使っているものの原価も高くてですね……これ以上お安くすると、赤字になってしまう状態なので(笑)」と、営業部の半田さん。「ほかにもいろいろなラインナップをご用意しているので、お客さまに合わせてご提案できます!」ということなので、ぜひショールームへも足を運んでみてください。
「スパージュは基本性能がものすごくいいものになっていますので、たくさんオプションをつけていただかなくても満足いただける商品になっていると思いますよ」と道端さんも。確かに、実際にリフォームで入れたオーナーさまからの評価も高い商品です。もちろんオプションをつけただけ金額は上がっていきますが、どうしても譲れないところもあるはず。ご家族がどの機能を重視するのか、徹底的に見極めてプランニングしていくことも肝心でしょう。
リフォームでスパージュを選ばれる方にやっぱり人気なのが「アクアフィール」です。最初に出た肩湯だけではなく、最新モデルではウェーブ状の噴流によるマッサージ感がある肩ほぐし湯も。また、腰まわりを広範囲にほぐしてくれる腰ほぐし湯の機能も追加されています。これらを全部を盛り込むのにも、だいぶ苦労があったよう。そのあたりのマニアックな部分も、八木さんに聞いてみました。
「これは、まず浴槽のお湯を吸水して肩から出すという構造なので、その吸水口が必要になります。そして肩からも腰からも両方出せるようにするには、二方弁のような形も必要になる。しかし、浴槽の裏のスペースというのは、非常に限られています。その限られたスペースの中で、浴槽の下のポンプだったり、切換え弁だったりを配置して、さらに何かエラーが出たときにはメンテナンスもできるようにしておく必要もあるんですね。かといって浴槽裏のスペースを広くとってしまえば、入浴するときに足が伸ばせない、なんてことも起きてしまいます。そうならない最適な設計を探っていくのは、開発としても非常に苦労した点ですね」
さまざまな角度から「お湯の体験価値」を考えた日々
道端さんからは、「社内の研究所もありますけど、社外の専門家にアドバイスをいただくということもやっています」という情報も。最新モデルで発表された「グランフィット浴槽」なども、その成果だといいます。「肩湯をより最適に浴びるためにはどういう形状がいいのかというところをアドバイスしていただき、設計されています」とのこと。そのあたりも八木さんに教えてもらいました。どういった専門の方のアドバイスだったのでしょう?
「スポーツ医学とか、そういった専門の方に協力してもらって、背中の形状であったり、肩ほぐし湯などが当たる場所だったり、その強さも含めてのアドバイスをいただきました。背中の形状は老若男女の背中の形を調べるところから、いろんな方の姿勢にフィットするような背もたれ形状を導き出しています。それらに合わせて、よりみなさんに満足してもらえるようなR形状に。加えて、自然に背中を預けるとちょうど真ん中にいきたくなるような背もたれの形状になっているので、肩湯や肩ほぐし湯、腰ほぐし湯がしっかり当てたい位置に当たるようになっているんです」
すべては、「お湯の体験価値を最大限に高めるために」。最新モデルでは、肩ほぐし湯と腰ほぐし湯を導入したタイミングで、「それらを最大限楽しむための浴槽の形状はどんなものか?」を突きつめて考えた結果、この浴槽もできあがったといいます。ぜひそんな開発の思いも感じながら、ゆっくりと浸かって楽しんでほしい贅沢なお風呂です。
半田さんに質問!「おしゃれなデザインだけど、お掃除が大変じゃないの?」
もちろん、一般的なお風呂同様、定期的なお掃除は必要です。ただ、汚れがつきにくい工夫は随所に施してあり、マットな質感だから特別に汚れやすいなどということはありませんのでご安心ください。
従来のタイルの目地はセメントのものでしたが、スパージュでは樹脂の目地を採用しています。水が浸透しにくく、カビなども生えにくい素材です。また、アクアフィールも内側に水がたまったりしないよう、水の通りの勾配などこまやかな調整を重ねて開発されています。追い焚き機能などと同様、風呂釜炊き専用の洗剤などで定期的に洗浄していただければ問題ありません。