あのユニットバスの開発秘話が聞きたい！－TOTO サザナ
進化し続けるお掃除機能、さらなる空間の気持ちよさを
「お風呂のリフォームをしよう！」と久しぶりに最新のものをチェックすると、その進化に驚かれる方が多いのではないでしょうか。
そんな話題の商品、人気のシリーズについて、開発に携わった方々に直接インタビュー。
TOTO株式会社 浴室商品企画Gの三上貴之さんに、発売までの道のりと、そのこだわりを教えてもらいました！
「お掃除ラクラク」だけじゃない「想像以上に気持ちいい」へ
汚れを落としやすく乾きやすい「お掃除ラクラクほっカラリ床」など、お掃除しやすい工夫が随所に盛り込まれていることで知られる「サザナ」シリーズ。
最初に登場したのは２００８年ですが、何度もモデルチェンジをくり返したあと、最新のリニューアルモデルでは「うちのお風呂は想像以上に気持ちいい」をキャッチコピーに、さらなるこだわりが盛り込まれているようです。
「お客さまの声で、やはり多いのが『お風呂掃除が嫌だ』という声。それを受けて、２０１６年のリニューアルで軸となったサザナのコンセプトは、『お掃除ラクラク』でした。ＴＯＴＯでは『シンラ（ＳＹＮＬＡ）』など、さらにグレードの高いシリーズの開発にも力を入れています。そうしたところから、お掃除しやすいとか使いやすいといった基本的な要件だけではなく、その上には『もっとリラックスしたい』といったニーズがあることがわかってきたんですよね」
そう語るのは、サザナの開発に携わっている三上さんです。
「ずっといたくなるお風呂、使っていてうれしいと思っていただけるお風呂を目指しました。」
汚れを落としやすく乾きやすい、そして〝柔らかい〞床
話題の機能や仕様がたくさんある中でも、気になるのは長年進化し続けている床。汚れを落としやすく乾きやすいのも大きな特長ですが、〝柔らかさ〞というのも特筆すべき点です。
「もともとＴＯＴＯには水はけがよく乾きやすい『カラリ床』という商品があって、排水のお困りごとに関しては解決できている自信作でした。そこから、お風呂の床に座るとか、ひざをつくと硬くて痛いといった声をきっかけに生まれたのが、『お掃除ラクラクほっカラリ床』です。ユニットバスの硬い床が柔らかくなったら解決できるのではという発想のもと、いろいろ調べていくと、温泉などでも畳を敷いていたりするところがあることがわかりました。そういうものもあることから、『これはきっと新しい価値として認めてもらえるはずだ！』と企画し、皆の熱意で実現することができました。」
「お客様に喜んでいただける製品を量産するにあたり、『柔らかさ』を決めることが大きな課題であり、苦労した点です。さまざまな検証を重ね、人が心地よいと感じる柔らかさは『畳の柔らかさ』ということで、製品化しています」
他の追随を許さない画期的な床は、こうして生まれました。
自動洗浄機能や４点で体を支える浴槽も
ＴＯＴＯの技術力を感じさせるものでは「きれい除菌水※」の存在も。水からつくる除菌成分、次亜塩素酸を含む環境に優しい水です。トイレの分野で活躍していたこの除菌水は２０１８年にお風呂に転用、翌年サザナにも追加されました。
「汚れを落としやすいよう親水加工されたほっカラリ床と、きれい除菌水の相性がとても良かったんです。多くのお客さまがお手入れに困っている床できれいを長持ちできる商品にできると思い、開発の強みになりました」
ボタンひとつで皮脂や角質の汚れを水で洗い流し、その後きれい除菌水をくまなく吹きつけてカビの発生なども抑えてくれる「床ワイパー洗浄」。なんとも便利な床の自動洗浄機能は、オプションでつけることができます。
「お風呂は自分たちも使うものなので、もちろん好き嫌いはありますけど、やっぱり自分がいいなと思ったものは、お客さまの声にもつながるなと感じています」という三上さん。最新モデルで登場した「ゆるリラ浴槽」も自信作だそう。
「リラックスという視点で社内にある研究所とデータを集め、人間工学の観点から、より体が楽になる方法を模索しました。その結果、背中とお尻、足先の３点だけでなく、首も入れた４点で支える浴槽となったのです。包み込まれるような背中のカーブも、接触面が多い分、体にかかる負荷を減らしてくれます。ＴＯＴＯのノウハウが詰まっているので、こちらもぜひ体感してもらいたいですね」
そのほか細かなところにもお掃除が楽になるポイントが
もともとサザナのコンセプトにあったお掃除のしやすさは、細かなところまで考えつくされています。たとえば排水口の「らくポイヘアキャッチャー」。落ちた髪の毛が水流によって自然と丸まり、簡単にポイっと捨てられるヘアキャッチャーです。
「どうしてもべたっと排水口で絡まりやすい髪の毛は、お掃除の悩みでよく聞かれました。まず手で直接触りたくないというのがあって、ティッシュなどでみなさんとって捨てられるのですが、それを触らずにキャッチャーをひっくり返して捨てられる形状を考案したのです。全部をメッシュにせずに下に少し水がたまるようになっていて、そこで水流によって髪の毛がボールのようにまとめられるように設計されています」
また、汚れにくいという点では鏡も自信作なのだそう。
「この鏡は、炭素の被膜処理によって水垢がついても落としやすいものになっているんです。他社でもいろいろ工夫されており、『汚れが落ちてきれいになる』と言えば同じように聞こえますが、一般的なコーティングでは数年で効果が薄れてしまいます。TOTOのお掃除ラクラク鏡はガラス以上の硬さを持つ炭素の膜により、耐久性が高く、長期的に効果が持続するんです」
そこには、素人には計り知れない設計の妙があるようです。
仕上がりのディテールにも細心のこだわりが
とにかくたくさんのこだわりが詰まった「サザナ」。聞けば聞くほど出てきます。
「手すりとしても使える『コンフォートシャワーバー』も注目してほしいですね。そんなに見た目が変わらないように思うかもしれませんが、通常シャワーバーとしての使用では考えつかないようなところまで配慮されています。強度はもちろん、ちょっと持ちやすくアーチがかかった形状をしているのですが、それで小さい子が頭を挟んでケガをしないようにとか、あらゆるシーンを想定して開発しています」
「シャワーヘッドの角度を自分の気持ちいい角度に調整できたり、頭の上からオーバーシャワーにできるようにしたところも、お客さまの声から生まれた仕様です」
「あと、お風呂のふたも。『ラクかるふろふた』は、従来のものでは重く、扱いづらいといった声に対して、材料と構造を見直すことで、断熱性能はそのまま従来の半分ほどの重さにできました。」
挙げればきりがないですが、最後にカタログにもくわしく載っていないような三上さんがイチ押ししたいこだわりのポイントを聞いてみました。
「私は企画の仕事をする前は開発にいた人間なので、TOTOでは性能や品質と同じくらいディテールに対してもこだわっているというのは声を大にして言いたいですね。パッと見、同じような機能を有している商品でも、品位というのはどうしてもないがしろにできないもので……。
具体的なところで言うと、たとえば樹脂製品は樹脂を温めて成型するわけですが、その強度を保つために表面にリブという補強みたいなものがたくさんついているんです。でもそれが肉厚になっちゃうと温度を下げたときにそこが凹んでしまったりするんですね。あとは、樹脂が型の中をまわるときに線がついたりするのですが、それは温度のかけかたによって目立たなくできる。カウンターひとつとっても、そういうところができるだけ出ないようにするのが腕の見せどころです。
デザイン部門も、そういった美しさみたいなものに非常にこだわりを持っていますので、ただ単に機能があって、形ができていればいいのではなく、本当に角の丸みが１㎜違うだけで変わる世界でデザインをしています。工業製品ですが、そういった収まり方も含めて、品位には非常にこだわっているところも見ていただきたいですね」
そう言われると、改めてショールームなどでチェックしてみたくなります。みなさんもぜひ、そんなところも気に留めて眺めてみてはいかがでしょうか。
三上さんに質問！「浴槽の包み込む形状は、どんな体型にもフィットするの？」
A いろいろな人体のデータをもとに、だいたいのところは網羅できるように設計しています。身長が2ｍあるような大きな方や、小さなお子さんなどは設計上の使用想定シーンのターゲットから外れてしまうこともありますが、安全性はしっかり担保しながら、対応できるように考えています。
たとえば、お子さんなどは通常半身浴で使うステップに脚を突っ張って姿勢を保持できるようにしたり、逆に大きな方はそちらに足を伸ばしてVの字に入っていただくようなことも想定しています。TOTO自体には、いろいろな方のニーズに応える浴槽のラインナップがそろっていますので、「ゆるリラ浴槽」に限らず、いろいろご検討いただければと思います。