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2026.04.10

スウェーデンの100年住宅 FILE 1

スウェーデンには「住宅は世代を超えて受け継ぐもの」という価値観が、今も暮らしの中に息づいています。その思想を体現している存在が、ストックホルムを拠点に、100年以上前に建てられた住宅を専門に扱う不動産会社 Historiska Hem です。

Historiska Hemが紹介するのは、単なる「中古住宅」ではありません。19世紀末から20世紀初頭に建てられた住まいを、当時の素材やディテール、街並みとの調和といった歴史的価値を大切に守りながら、現代の暮らしに合わせて丁寧に再生した住宅です。無垢材のフロア、分厚い壁、長い時間を経て味わいを増した建具など。そこには、新しいものでは決して生まれない、本物の質感があります。

特筆すべきは、住宅を「消費するもの」ではなく、「次の世代へ引き継ぐ資産」として捉える姿勢。リノベーションにおいても、短期的な流行に流されることなく、100年先まで使い続けられる普遍的な美しさと耐久性が重視されています。この考え方は、「100年住宅」を掲げるスウェーデンハウスの思想とも深く共鳴するものです。

Historiska Hemの住まいは、過去の時間を大切に抱きしめながら、これからの暮らしを静かに育てていく器。「家は、長い時間を生きるもの」。その答えが、ここスウェーデンには確かに存在しています。

Written by ブルセリド山本 由香/Photo ©Historiska Hem

時代の美しさを今に伝える19世紀末の木造ヴィラ

家の外観
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ここからは、Historiska Hemが取り扱う、1890年代に建てられた一軒の家をご紹介します。 19世紀後半のスウェーデン建築は、新ゴシック様式、新ルネサンス様式、新ロココ様式など、さまざまな歴史的様式の影響を受けて発展しました。なかでも主流となったのが、古代ギリシャ・ローマの古典様式を基盤とする新ルネサンス様式です。国際的な建築雑誌を通して新しい理想が広まり、スウェーデンの建築家たちはヨーロッパの大都市へと視線を向けるようになりました。

この家が建てられた1892年は、装飾過多な時代から、素材の美しさや職人の手仕事を大切にする建築へと価値観が移り変わる転換期。繊細な葉模様の木彫装飾や、縦溝を施したピラスター(付け柱)で彩られた外観は保存状態も良く、かつて保養地として親しまれた地域の歴史を今に伝えています。

地下室のある1.5階建ての屋根には、折り加工された黒塗装の金属板があり、外壁は黄色系に塗られた横張りの羽目板で、装飾的な木部は白く縁取られています。窓まわりには、切り抜き装飾のある枠が取り付けられ、小さなドラゴンの頭やフランスの百合のモチーフがさりげなく施されています。こうした意匠は、「大工さんの遊び心(Snickarglädje)」と呼ばれる、1890年代のスウェーデンらしい住宅装飾です。

食品貯蔵やワインセラーになる地下室の入り口
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バルコニー
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古い様式を残した造り付けのキッチン、研磨・漂白・オイル仕上げのウッドフロア、傾斜天井や現し梁、幅広の床板、高い幅木、框付きドアなど、19世紀末の住宅に典型的なディテールが、今も自然なかたちで残されています。

昔ながらのタイル張り暖炉のあるリビングルーム
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リビングルームには明るい陽射しが降り注ぐ
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傾斜天井の2階のバスルーム
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室内は、広々としたキッチンとリビングを中心に、最大5つの寝室を備えた、ゆとりある間取りです。上階には3つの寝室が配置され、トイレとシャワー付きのバスルームは両階に設けられています。

使いやすくリノベーションされたキッチン
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現し梁と昔ながらの古い石のストーブが残るキッチン
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機能主義時代のシンプルなタイル張り暖炉
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キッチンの石の暖炉
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昔ながらのタイル張りの暖炉と、各階に1つずつある2つのバルコニーが、日々の暮らしに豊かさを添えます。通り側には三角屋根付きの階段室が張り出し、繊細な装飾のある屋根の下が玄関に。中庭側には、上階のバルコニーを備えた出窓と、それを囲むベランダがあり、内と外をやさしくつなぎます。

古い石の暖炉のある部屋
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19世紀末の住宅に典型的な傾斜天井や現し梁の残る子ども部屋
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この家は、古いものを大切に守りながら、現代の暮らしにそっと寄り添わせるという、北欧らしい住まいのあり方を、静かに語りかけてくれる存在です。

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